通信制高校に行くようになったきっかけ

高校一年生の、初夏

 

その夜、自室でゴロゴロ
スマホを見ていると

 

「そろそろこの部屋にもクーラーがいるな」と

いきなり私の部屋に入ってきた父が言った

 


当時、私の部屋にはクーラーがなくて
夏は暑かった

 

クーラー付けようか、
という気遣いを持ち掛けてきた父だが

 

その時、父は酔っ払っていて

酔っぱらうと話がくどくなるし


私は内心、自室に踏み込まれた事に
(鬱陶しいなぁ)と感じて


スマホの画面をみたまま

生返事で「んー」と返して無視すると

その反抗的な態度に、
ムカッとしたらしい

 


父は不機嫌になってリビングに戻っていくと
「生意気だ」「アイツは生意気だ」と
母親に愚痴り始める声が聞こえた

 


どこの家庭の父親も、年頃の娘には
こうして鬱陶しがられてしまう宿命なのでは…
と私は思うが

 

その日の父はアルコールが入っていたので

話題はだんだん、おかしな方向になっていって


何やら母親とケンカをはじめて

ヒートアップしているのが

ビングから聞こえていた


父は酒を飲むと、乱暴になる人だった。


普段は家族サービスも旺盛で

夏休みや冬休みには

旅行に連れて行ってくれたし


家族の仲が特別に悪かった

という訳では無い。


しかしお酒が絡むと

これまで様々な事件が起きてきて


警察に厄介になったり、


時には母親、私や弟にも

手を上げられることがあった 

 

(ああ…もうこれ、何回目だろう)
私は一人、幼少期の記憶を思い出す

 

 

.*・゚ .゚・*.

 

 

私の幼少期は、

なかなかにハードな環境で育ってきたと思う

 

夜中、

夫婦喧嘩の激しい罵りあいで

目が覚める

 

 

「私を殺そうとしてる」
そう言って、泣き喚く母と


「お母さんを殺さないで」

と泣くしかできなかった記憶

 

当時まだ、

小学校低学年くらいだったように思う

 

 

 父親が、職場の飲み会で

泥酔して帰ってきた日は


扇風機は破壊されたし、窓ガラスは割れたし、

引き出しの扉は外れるわ

もう大変だった


母親はもうこれまで

何度も離婚しようとしたらしいが


父は翌日になると

「もう二度とやらない」

「覚えていない、すまんかった」と平謝りして


それの繰り返しだった



いま考えれば「異常」だと思う

こんなのが「普通」だとはとても思えない



私は早く働いて、

もう父から離れて生活していきたいと強く思っていた

 


.*・゚ .゚・*.


 

父は暴れるだけ暴れて、そのうちに

ぽっくり眠ると、リビングは静まりかえり



父が寝て、静かになった後も

私は、幼少期から体験してきた記憶が

ずっと頭の中でリピートして

なかなか寝つけなかった

 

夜が明けると、朝がきて。

 

私にはいつも通りに高校生活が待っていたが

 

起きる気力も、体力も疲れ果てて

何もかもが、どうでも良くなった

 

元気にクラスメイトと顔を合わせに

学校に行くような気持ちにはとてもなれず

 

 

この日、1日学校を休んだことをきっかけに

その次の日も行けなくなって

一週間休んで…


とうとう私は、

学校へは行かなくなった

 

 

 


.*・゚ .゚・*.

 


通信制高校編入した

 


どっちみち、
私には普通の公立高校は
居心地悪かったんじゃないかと思っている

 

ほんとの所、
「家庭環境による心労」を言い訳にして
高校を辞めたかっただけなのかもしれない



高校がとても楽しかった訳ではない

(物凄く嫌だった訳でもないけど、

なんだか当時は気力がなかった)


父のせいにしておけば、
私は誰にも責められずに辞められる
そんな思いも含まれていたと思う

 


だけどその時は
学校へ行く事は考えられず
布団からも出ずに、毎晩泣くようになった

 

 昼間は両親がケンカしているし



夜になると

フラッシュバックするようになったのだ

幼少期見てきた、父親の暴力の場面が

 


もう昔の話を思い出しては

静かな夜、誰にももう怒鳴られていないのに
当時の出来事をありありと思い出して、
呼吸が引き攣る

 


「支えが欲しい」
こんな風に切願していた

 


誰か私に寄り添って
「あなたは悪くないよ」と
絶対的に、味方してくれる人が欲しかったんだと思う

 


現実世界では

「なんで高校辞めちゃうの!?
勿体ないよ、がんばろうよ!」

という友人や親戚の言葉が

 


どうしても、
私を責めているようにしか聞こえなくなった

 


学校とか、どうとかじゃなくて
「辛かったね」
と私の気持ちに寄り添ってくれる人が欲しかった

 

スクールカウンセラーにも家庭のことを

相談したが、イマイチ。
優しい先生だったけど、私は心を開けずにいた

 

 

 つづく