中学生時代 黒歴史の片想い

私の職場は、
近所のスーパーマーケットだ


そこで、学生時代に長らく片想いしていた人が
買い物しているのを見た


幸いその日は休日で、
自分の職場の前を通り掛かっていたのだが


(…あ)


買い物カゴを持ってる、

数年経っても、変わらぬ風貌に
一目で「彼だ」と分かり


一瞬、立ち止まりそうになるくらい
時間がスローに感じた




.*・゚ .゚・*.




中学1年生

最初は全然好きなタイプじゃなかった

顔もタイプじゃないし、
私はもっとスポーツマンタイプの
明るくて面白い人が好きだったのに


彼は
色白で、眼鏡をかけていて
綺麗な黒髪の、インドア系の男子だった


だけどたまたま、
名前順で席が近くて
話してみると面白かったのと
(私も彼も、オタク系だった)


私は当時、
ちょっと調子に乗って立候補した
委員会活動に目いっぱい打ち込んでいたのだが


真面目にクラスをまとめようとしても
声を聞いて貰えなかったり

「うるせぇ!真面目ぶりやがって!」

という風に、特に男子から、
煙たがられていたのだが…(苦笑)


彼も真面目な性格だったので
委員会活動には全く関係ないのに

隣で一緒に手伝ってくれたり、
男子を黙らせるように、声を掛けてくれた


それがきっかけで、
気付いた頃には惚れていた


だが
恋心を自覚してしまうと
距離感をどう取っていいか分からなくなった



いつも通りに、
友達のように話せなくなってしまったし


緊張で、
訳分からん事話したり

「嫌われないように」
一生懸命立ち振る舞って


そのうち、
話しかけて貰えなくなったので
「仲のいいクラスメイト」
でもなくなってしまった




ある日彼に、
「ごめん、
ちょっと10円足りないから貸して」
と言われた事がある


パン代の10円が足りなかったらしい


たった1枚、貸したコイン
ほんとは、10円なんかどうでも良くて
返って来なくてもいいものだったのに


私は、なにか話す口実が
どうしても欲しくて



「ねぇこないだ貸した10円さ、
返してよ」

と後日しつこく、詰め寄った


かなりウザい女だったんじゃないかな…
と我ながら思う



1週間くらい彼を追っかけ回して
やっと返してもらった




他にも、
とにかく何か話すきっかけが欲しくて
シャーペンを貸してほしいとわざと頼んだ


彼は、
何気なく自分のシャーペンを貸してくれたが


好きな人のシャーペン握った瞬間
緊張してきて、嬉しくなってきて

(私の、変態気質は未だ変わらない)


手汗がヤバくて
返したシャーペンを握った彼から

「お前、手汗やば…」と呟かれた日を
もう10年くらい経った今でも覚えている




.*・゚ .゚・*.



部活中のお喋り
友達との通話
下校中の話題


全部が、彼の事だった。
毎日話しても、話し足りないくらい大好き



高熱を出して、学校を休んだ日には
布団の中で
西野カナ」を聴きながらずっと泣いた


あまりに寂しいので、
アルバム引っ張り出してきて
写真の中の笑顔を見ながらまた泣いた


そんなにイケメンじゃなかったのにな。
今考えたら結構ヤバいな…




さて、こんなに惚れ込んでいたので


バレンタインデーには勇気をだして
チョコを渡す事にした


「バレンタインの日は、
ちゃんと告白したいから!」と

友人にも
一緒にチョコ選び手伝ってもらって


2月14日の朝
いつもより30分くらい
早くに友達に集まってもらい


ショートカットの短い髪を
編み込みでアレンジして貰った


「うん、可愛い可愛い!よしいける!」
友人に励まされながら

早朝に登校してくる彼を待ち伏せ
ラッキーな事に、
朝の教室で2人きりになれたので

「はい、これ…貰ってよ!」

とかそんな感じで
チョコを差し出した



「え、お返しめんどくさいわ…要らない」


そう言われて、撃沈した

この時点で
「脈ナシ100%」じゃん、と思う



せっかくの、女の子の好意に
「めんどくさい」と言い切る男とは
付き合わなくて正解だったよ私!


そう思うものの…
やっぱり恋は盲目で



「お返しとかいいから貰ってほしい、
ねぇ!机の中入れとくからね!!!」



強引にチョコレートをゴリ押しした



多分私は
恋愛に関しては
恋は盲目、突進型過ぎて

イノシシばりにタックルしていって
どんどん逃げられるのだと思う(苦笑)




ホワイトデー。

「めんどくさい」と断言した彼は
その通り、お返しもなにも。無愛想だった





その後、春休みに入り




2年生になった

あっという間にクラスが変わって
私達は、別々のクラスになった


クラスが離れれば、
恋心は収まると思っていたのに


廊下ですれ違った時

合同授業で一緒になった時



一目会えるだけで、
嬉しすぎて死ぬかと思った



まさにハイテンションで
その日一日は、ずっと夢心地だ



推しが3次元にいるって
凄い




例えば
ドン・キホーテで買い物してて
彼の柔軟剤と同じ匂いがした時
(まさか!)と思ってキョロキョロする
いる訳がないのに。


「恋愛本」コーナーに入り浸って
恋人になった後の
自分と彼のデートについて妄想する



もう…あんな風な恋は
出来ないと思う(笑)




中学3年生になっても
まだ私の片想いは続いていた



だが
昔、仲が良かった頃より
ずっと距離感が空いてしまって


せっかく同じクラスになれたのに
あまり、積極的に話せなかった



(3年生になって
またシャーペンを貸してもらう機会があったので
手汗だけは気を付けようと思って
ペンを借りた)




クラスに、
私と同じ苗字の男子がいた


「夫婦、夫婦」と
からかわれて


彼から「結婚おめでとう!」とか
言われるの、悲しかったけど


そのうち私のあだ名が
「お母さん」になったため
もはや女でもない、
母親ポジションにされてしまった


好きな人から
「おかあさーん」と呼ばれる悲しみ


それでも私は
彼の肉親でも、なんでもいいから
傍に居られる人になりたかった


親戚、姉、家族


彼のプライベートに踏み込める人が
羨ましくて、嫉妬していた


実姉になれば
構わずセクハラできるのに…!と思って妄想



やっぱり私は
相当やばい女だ

彼は私を選ばなくて正解だったかもしれない…




卒業を控えた
エイプリルフールの日


このまま卒業では、私が納得できずに
もう一度、彼に告白する事にした


なぜエイプリルフールを選んだかと言えば


美術部の私と吹奏楽部の彼が
部活動の時間帯が重なるのはこの日だけだったのと

エイプリルフールだと
「ウソでした」の言い訳が出来ると思ったからだ



私は美術部だったので
メッセージカード手作りして

(メッセージカードが手作りというのも
彼にとって、恐怖だったかもしれない)


カードには

「今日はエイプリルフールの日ですが
私の気持ちに嘘はありません」

と書いた気がする



恥ずかしい…


私はそれを
彼の靴箱へ入れておいた

毎朝、彼の靴箱はチェックしているので
位置は覚えている



そう、
私は恋をしたら
「その人しか見えなくなる」


学生時代、


実は男子にいじめられていて
辛い暗黒時代を送っていた訳だが

それでも
毎日学校に通って脳内お花畑で過ごせたのは


絶対に、
彼が居たからだ

彼への異様な執着心のお陰で
私は学校へ行けていた


そういう意味では
心から感謝しているし、
あんなに好きな人を作れた私にもすごいと思う



話を戻すが
告白手紙を入れた翌日



部活動で
トロンボーンを吹いてる彼の元へ行って

「手紙読んでくれたかな…」
と聞いてみた


あの恥ずかしい手紙だが…



彼からの返答は
「あれ、Kの靴箱に入れといたから」

「えっ…」



※Kくんというのは
クラスのお調子者の丸坊主頭の男子だ
悪い子ではないのだが
全然、好きではないタイプ



Kくんの靴箱へ入れ直した
というのは冗談だと思うのだが

(冗談であってくれ)



完全に脈ナシすぎて
他の男子に宛てがわれたのがとても悲しかった



そこまで拒否されて
まだ、恋を諦められないのが「蠍座の女」



ここまできたら
「彼を振り向かす」事よりも


「卒業するまで、
いかに楽しい思い出を作れるか」
のほうに気が向いていった



卒業までに、ちょっとでも一緒に過ごしておきたくて



友達混じえて、
グループデートのボーリング企画を立てた



彼も誘ったが
嫌そうに「行かない」と断られてしまった



それでも当日、
場所と待ち合わせ時間は伝えておいたが
やっぱり彼は現れなかった


好きでもない男とボーリング
せっかくその日の為に用意した
勝負服が虚しかった



卒業後



彼に
「あの日、来て欲しかったなぁ〜」と
打ち明けた時


他の参加した男子メンバーへ
「お前らマジで行ったんだ」
と言ってて悲しくなった


こうなれば、
やけっぱちだ


最後のアプローチで
彼にメアドを聞いてみた。


「嫌だ、教えない」と
頑なに拒否されたが




私はもう、
やれる事、全部やってやろうと


財布に入っていたレシートの裏柄に
自分のアドレスを書いて


「じゃあ、気が向いたらメールしてね」
とそれを渡した



一応、
受け取ってはくれたが


その後、
ゴミ箱に破って捨てられる瞬間をみて
泣きそうになった



これでも
まだ諦めない私は
ゴキブリ並の生命力を発揮して


最終手段。

男友達に彼のメアド教えてもらう様に頼んだ
(もう諦めろよ)



苦労はあったが、やっとこさ
好きな人のメアドゲットした私は



「こんばんは!
○○にメアド教えてもらいました!
いきなりごめんね(><)

良かったら登録してください!」


みたいなメールを送ったはず




彼は私のメール受信して
きっとガクブルしただろう


想像通り
返信は来なくて…




私は鼻息荒く、有名な占い師の所へ押しかけ
相性診断を占ってもらったが


「男の子って、彼だけじゃないから」
そう励まされて


ようやくこの恋は諦めるべきなのだと気付いた

やれる事は
全部試してみてそれでもダメだった恋だから
納得出来たのだと思う





この後は1度だけ、街中で
高校のブレザーに身を包む彼を見掛けたが


私は話しかけられずに、何も言えなかった




そういえば後日、知ったのだが
彼がバレンタインのチョコレートを拒否したのは
「チョコが苦手」だったらしい


なんだそんなこと、
今更知っても意味が無いのに





こうして
時間と共に
なんとなく恋心は消えていって



長い長い、
狂気じみた
ストーカー片想いは


虚しく、幕を閉じたのだった




あの彼が、今でも元気にしていることを願う